自社株買い

【自社株買いとは】

自社株買いとは、上場企業が株式市場から過去に発行した自社の株式について利益剰余金(資本の一部)などを使って買い戻すことです。自社株買いで買い戻した自社株は金庫株と呼ばれ、消却(株式自体が消滅)されるほか既存株主への還元、ストックオプション(自社株式を購入できる権利)の付与、株式交換、敵対的買収の備えなどの目的で保有されます。

自社株買いによる株価への影響は一般的には上昇するケースが多く、その理由は3つあります。まず、1株当たりの利益(EPS)の上昇です。企業の利益が同じなら株数が減少すると1株当たりの利益は増加し、PER(株価÷EPS)が下がります。PERの低下は株式の割安感につながって株価が上昇しやすくなります。

第2の理由は配当性向などの改善期待です。配当の全体額が同じの場合、消却され株数が減ると1株当たりの配当金が増加するので、既存の株主には好感され株価の上昇につながります。また、自社株買いとともに配当額の増加が発表される場合など株価はさらに上昇するでしょう。

第3の理由は株価の上昇期待です。自社株買いで市場に流通している株式を吸収することで株価が上昇しやすい状況が生まれ、その企業の状況次第では実際に値上がりするケースも見られます。

自社株買い銘柄への投資の判断とタイミングとは

自社株買いを行う企業の選定は、これから自社株買いを行いそうな企業への投資と、自社株買いを発表した企業への投資に分かれます。

前者の場合、自社株買いしそうな企業の予測が前提となり、外れる可能性が低くありません。そのため他にも株価が今後上がりそうな要因を含めてその候補を探していくことが望ましいでしょう。

自社株買いしそうな企業の特徴は、資金に余力のある借金の少ない企業、浮動株比率が低い(浮動株が少ないと株価の変動が大きい)企業、ROEが低い企業 などです。また、新興企業などで、事業の拡大に多額に資金を回す必要がなくなり株主還元へ意識が向かい始めた企業も可能性が高くなります。

これらの要素を銘柄のスクリーニングの際に選択条件として加えれば、投資候補を絞っていくこともできるでしょう。

自社株買いを発表した企業への投資の場合発表後から株価は動き出し、上昇しそうな銘柄を早い段階で買っておけば大きなリターンも期待できるでしょう。そのためできるだけ早く自社株買い発表ニュースを掴む必要があり、それには東京証券取引所の「適時開示情報」の確認が有効です。 「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」という内容で発表されるので容易に見つけられます。

問題は大きな上昇が見込めそうな自社株買いどうかという点です。その判断には、

1) 発行済み株数に対する自社株買い割合
2) 1日の出来高への関与率(毎日の出来高に対する自社株買いの割合)
3) 浮動株比率に対する自社株買いの割合 

が利用できます。例えば、

1) は3~5%以上
2) は10~20%以上
3) は5~10%以上

などと設定します。数値が高いほど発行済み株式数などに対する自社株買いの影響が強く、株価は下がりにくい状態になり、強い上昇圧力をもたらす可能性が高まります。

なお、売りのタイミングは自社株の買い付けが終わる時点の前あたりになりますが、株価の上昇が早ければ買い付けも早めに終了することもあるので注意しましょう。

自社株買い銘柄に投資する場合の注意点

自社株買い銘柄は上昇する傾向があるものの、その上昇の仕方は銘柄ごとに異なります。ケースによっては自社株買いの発表後に小幅な上昇があってもすぐに下降していくこともあるので注意が必要です。

特に今後の業績の向上、事業の成長力などが期待しにくい企業が一時的な株主還元の目的で自社株買いを行う場合はあまり評価されないかもしれません。また、社債などで自社株買いの資金を充てるケースでも評価は厳しくなる可能性があります。

先に確認した「発行済み株式数などに対する自社株買いの影響」に関する条件に加え、企業の業績動向や成長性などを加味して対象銘柄を検討するとよいでしょう。

また、自社株買いが実施された場合でも、将来買い戻された株式が再び市場へ売却されないか注意が必要です。自社株買いが「消却」される場合、株式は消滅するのでそれによる影響はありません。しかし、「処分」される場合は、株式が他者に売却されるので需給が改善し株価へ影響します。そのため自己株式の処分が発表されるとその企業の株価が大きく下落することがあるわけです。

そのため自社株買い銘柄に投資して中長期に保有する場合などは特に自己株式の処分に関するニュースには気を付けておかねばなりません。